『冤罪File』

冤罪File

ごく軽い装丁で気軽に持ち歩けるのに、胸の中には、実にずっしりとしたものが残る一冊です。
私たちが本当はどんな社会に生きているのかということを知りたい人には……いえ、日本の社会と関わりのあるすべての人に、必読だと思えます。
わずか380円。

自分も無実の罪でひょっとしたら死刑にまでなるかもしれない。
「いくらなんでもそんなことはあるはずがない」
というごく普通の感覚を、ごく簡単に打ち破られます。
打ち破ってくれるのは、この国の警察、そして決定的なのは、裁判所。

この雑誌の魅力は、様々な事件についての記事の内容はもちろんですが、編集の姿勢にあります。
警察や司法にある問題をえぐり出そうとする記事は、少ないながらもいくつかの媒体に載ることはありますが、そうした記事の多くは「国家権力を糾弾する!」といった主張につながりがちです。

でも、そうした見方は、本質を見誤る恐れがある、という考えが、この雑誌を貫いています。
事実をひとつひとつきちんと見ていく、というジャーナリズムの基本を忠実に守ることで、問題の恐ろしさが見事に浮き彫りになっています。

先日テレビ放映のあった映画『それでもボクはやってない』の周防政行監督のインタビューが巻頭。

記事のタイトルは、サラリーマン向け週刊誌や、『噂の真相』や、サヨク雑誌にありがちな「!」マークの多いつけかたをしているのですが、中身の印象は、それらとはずいぶん違います。
誌名、記事のタイトルが、黒と朱の太いゴシック体だけで構成された表紙は、もう少しなにか工夫のほしいところだけれど、そんなことにお金をかけたところで買う層が増えるわけでもなさそうだから、しょうがないかな。

次号は5月発売だそうです。この雑誌が頻繁に出るほど冤罪が多いことを望むわけではありませんが、しかし実に次も楽しみです。

[政治・国際・社会, 書籍・雑誌]
2008.03.08 - 10:32 AM |
森達也『死刑』 | 最近観た映像作品(『ジャンパー』他)

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