とらわれのひとびと

ふだん、皇室関係の報道にはまったく関心がないぼくですが、皇太子の発言のニュースには、「ずいぶん長い時間を割くのだなあ」と思いながらも、その長い時間、番組に釘付けになってしまいました。

キャリアウーマンで、浩宮さんとの結婚を否定していたころの雅子さんはとてもカッコがよかったので、皇室に入った後、見事に皇室スマイルと皇室手振りになり、話し方や言葉の選び方もすっかり変わってしまったのがひどく残念でもあり、完全に「転向」したのかと思っていました。

しかし、親と国家からの想像を絶する圧力で結婚せざるを得なくなったとき、やってきた外交官としての職務を、形を変えて行うだけなのだと、むりやりにも自分の心に言い聞かせたのだろうということが、今度の皇太子の発言から、想像できます。それさえもが許されないことに、ものすごい精神的なダメージを受けたのでしょう。

それにしても、皇太子があのような形で状況と心情を吐露するしか方法がないというのは、皇族という存在が現代の日本社会に今のような形であることの歪みとしか言いようがない。

自分たちで判断して行動することを完全に奪われ、そのうえ努力ではどうしようもない「世継ぎ」を強要されるというのは、虜囚への虐待と同じとさえ言えるでしょう。
これまでも、「国民の象徴」でありながら(正確には象徴は天皇ひとりですが、まあ皇族全体もまたそうだと言っていいでしょう)、人権を大幅に制限されているがゆえに自身は国民ではないあの家族には、強い痛ましさを感じていましたが、特に雅子さんのように、仕事で自己実現をすることを知り、それに喜びを感じる経験をしてきた人の悲痛さは想像を絶するものだったようです。

新聞の報道では、皇太子の「真意は不明」という言葉が使われているけれど、そしてよく政治家の発言などにもこの言葉が使われますが、この場合不明なのは「事実の詳細」であって「真意」ではないでしょう。なんかこういう言葉の使い方はゴマカシが入っているようで嫌です。

また、「世継ぎ問題を優先し、外国旅行を絞った」ということなんですけれど、外国旅行をしないようにすることと、子どもを作ることの関連がぼくにはよくわかりません。
旅行に行ってるときのほうが、お互いに気分が高まったりして、夫婦でも恋人でも、そういう気分になりやすいような気がしますけれど、だとすればなんで外国に行くのを制限するのでしょう。皇太子夫妻の旅行ともなると各所訪問・挨拶・晩餐会・パーティなどでヘトヘトになって、それどころじゃなくなるんだろうか。

ある幹部は「ご夫妻と意思疎通が足りなかった面もあるが、今はできる限りの努力をしている。ただ、細かいご体調など私的な部分に踏み込むのははばかられ、対応は難しい」と言う。(読売新聞20040515)
これもヘンです。「お世継ぎ」っていうのは、子どもづくりという本来は思いっきり超私的なことを、皇位継承者たちの公務としていることのはずです。宮内庁自ら「世継ぎ問題を優先」って言ってるんだから明らかでしょう。セックスについては踏み込ませていただきますが体調には踏み込めません、って何なんだ。

いったい右翼の人たちは何をやっているんでしょう。ぜひもっとがんばってください。

[政治・国際・社会]
2004.05.15 - 12:45 PM |
名前のローマ字表記 | 気になる用語「わかった」2

コメント

コメントを投稿