『パプリカ』(映画版)

小説を読み終わってから、ああこれはアニメーターにはたまらない素材の宝庫だ、と思いました。
夢にあらわれる様々なものごとが、アニメーションでしか表現できないような魅惑的な形で登場するだろうと。

そして……予想以上にすばらしい動きとアイディアの数々に驚嘆しながら、ぼくは存分に楽しませてもらいました。
小説をベースに、アニメーションという舞台へ、内容や演出を変えた料理のしかたも見事です。

なによりもパプリカが実にキュート。
千葉敦子とのキャラクターの違いの創出が、この物語の映像化のひとつのカギでしょうが、千葉敦子からパプリカへの変わり身が、見た目だけでなく表情、手足の動き、声によって、「どうだ」とばかりに提示されます。パプリカの様々なコスプレも、その姿ならではの戦いぶりや動きとあいまって魅力的。

声優陣はベテラン揃い。江守徹だけはどうしても俳優としての姿が連想されてしまったのですが、彼以外は、テレビでよく見る声優であっても声だけになるとキャラクターそのものになりきるのはやはりさすが。主人公の声の使い分けもすばらしい。

そして音楽がいいですね。
精神が夢を通して犯される、という、見方によっては重い主題が、明るい色彩にかぶさるこの音楽によってエンターテイメントとしてのワクワク感に変換されます。

作る側もきっととても楽しんで作ったと思うのですが、見る側もほんとうに楽しい。
そういう映画でした。
大画面で見てよかった。



ところで、アニメーション作家にとっては、パレードというものは、何か惹かれるものがあるのでしょうか。
『ロボットカーニバル』にも『イノセンス』にもそのような光景があったような気がしますが、どうもぼくは、カーニバルが移動していくシーンって、いつもちょっと退屈しながら見ています。
作る側にとっては、全体が大きく動きながら、細部もすべて別個に動いているものを作り込むところに醍醐味があるのかもしれません。漫画では、手塚治虫の初期の作品によくでてきたようなモブシーンは、見る側も細かいところに渡ってじっくり見て楽しむということができるのですが、この点はいかんせん映画館での鑑賞では画面を止めたり繰り返し見ることができないので残念。


千葉敦子は、映画を見ているときには「あんまり美人って感じじゃないなあ」という印象だったのですが、あとでパンフレットやWebサイトでよく絵を見てみると、けっこうな美人にちゃんと描かれています。
実際の美人って、顔かたちだけでなく、肌のキメとか光の反射とかそうしたものの要素が大きいんでしょうね。アニメーションにとっては、かわいいのをかわいらしく作るのに比べ、美人をほんとうに美しく見えるように作るのは、とてもむずかしいことなのかもしれません。それともやっぱりわざとなのかな。


音楽は、アカデミー賞にノミネート!したそうです。
しかもなんとそれを、無料配信中です。


appleのQuickTimeサイトで予告編が見れます。

▼『パプリカ』
オフィシャルサイト

▼『パプリカ』ブログパーツ。タグクラウドになってるようです。

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2006.12.14 - 07:56 AM |
筒井康隆『パプリカ』(小説版) | 崩壊する日本も世界の中

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