『人間にとって法とは何か』

人間にとって法とは何か』 (橋爪大三郎 著)
ISBN:4569630847

オウム裁判の一審判決が出て、法についての興味から購入。

最近、法というものが機能しなくなっていることへの危機感がある。
自衛隊の派遣についても、松本智津夫被告の裁判についても、なんだか漠然とした不安を抱いていたが、この本を読んで、今ぼくが住んでいる社会の中で法治がゆらいでいること、もしくは、法治というものが現在の日本社会になじんでいないことへの大きな不安によるものであるということがはっきりしてきた。

さらにいえば、それは論理が重んじられないことへの不安であり、何を言っても無駄かもしれないということへの恐れでもある。

いつも深みのある視点を与えてくれる橋爪大三郎氏著。以前からポット出版の沢辺さんに誘われている「人間学アカデミー」の講義録が新書になったものでした(今度はぜひ聞きにいきたい)。

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2004.3.20
読了。おもしろかった。
法でわれわれの社会がなりたっているにも関わらず、法の成り立ちや基本的な考え方はほとんど教えてもらった記憶がない。
こういうのはせめて高校で、いや、簡単な、しかし基礎的な部分は義務教育である中学で全員にぜひ教えてほしいものです。


ぼくの不安は、本来国民を守るものであるはずの法が、今の日本の社会では正しく運用されていないことへの不安です。
オウム裁判の判決からもまたそれを感じ、それで読み始めた本書でしたが、まさにこの裁判のことがちょうどぼくの知りたい文脈で取り上げられていて、やはり、と思わざるを得ませんでした。
明文化された法律にもとづかないかぎり、有罪とならず、処罰されず、逮捕されない、というのが、近代法の原則である「罪刑法定主義」。立証責任は検察にあり、立証できなければ推定無罪。
この原則について橋爪氏は「市民が市民として生きるうえで、もっとも根本的な原則のひとつだと思うので、ちゃんと理解してください」と強調しています。
こうした原則こそが(のみが)、自分を守ってくれる最後の手段であるにも関わらず、それが十分に実効していないということを、いろいろなことで感じるこの社会への不安はなかなか小さくなりそうにありません。

[書籍・雑誌]
2004.03.08 - 01:13 PM |
STIKFAS | 木星

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