『暮しの手帖 保存版III 花森安治』

『暮しの手帖 保存版III 花森安治』を読みました。
すごい人だったんだなあ。
広告を入れない、徹底した商品テストを実施する、といった程度の知識は持っていたけど、ぼんやり抱いていたイメージ以上の、筋金入りの編集者。編集者という言葉にはちょっとおさまりきらないけれど。

かなりぼくが好きそうなタイプ(って自分で言うのも変ですが)だし、『暮しの手帖』は、出るたびになんとなく本屋で気にはなっていたのに、これまで一度も買ったことがなかったのは、ぼくが興味を抱く前に花森安治がすでに亡くなっていたからかもしれない。78年に亡くなっているから、ぼくが書店で手にとってみるようになってからのはもう花森の編集したものではなかったのですね。
でもなんでうちにはなかったんだろう。母親がとっていなかったのがちょっと不思議。今度聞いてみよう。

初期の頃のを実際にみたいけど、高くなってるのかな……と思って調べたら意外にそうでもない。といっても古書としては高いか。一冊800円ぐらい。50号まとめて20000円というセットもありますね。
花森自身が毎号制作していた表紙(表紙絵を自分で描いてたってのも初めて知って驚いたが、ロゴまで毎回手書きって!? あの独特な字は記事のタイトルにも使われてるけど、全部編集長直筆だったんですねえ)もいいものがあるし、レイアウトや写真の使い方は、今見てもなかなかすごい。

この『保存版』で花森さんのすごさはひしひしと伝わったのですが、寄稿している人たちの原稿は、読んでて「ずいぶんいいかげんなもんだ」とも。
花森さんって人はいろんな伝説を生んでいるようではあるんだけど、だからこそ、いろんな人が同じエピソードをずいぶん違った形で記憶してて、そのいい加減な記憶のまま書いてる。
同じ話をこれだけ違ったバリエーションで読ませられると、この人たちの文章をまじめに読もうという気さえなくす。ちょっと調べたり人に聞けば確かめられそうなことなのに、しかもそうそうたる著者ばかりなのに……それこそ編集者はこのままでいいと思ったんでしょうか。とても不思議。

しかし花森亡き後四半世紀。よくもってるなー。広告なしで、商品テストなんて手間とコストのかかることをやって。……と思ってたら最新号には商品テストがないらしい! だいじょぶか?

[書籍・雑誌]
2004.02.01 - 02:02 AM |
庭園美術館「アール・デコ様式」展覧会 | 『黒蠅 』

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