女性天皇はOK、なのか

首相の開催する「皇室典範に関する有識者会議 [kantei.go.jp] 」において女性天皇・女系継承を容認することで一致したそうです。
なんとなく世の中の雰囲気は「女性が天皇でもいいじゃん?」という方向ですが、しかし、そう簡単なことではないのでは、という気がしています。

特に女系継承という点については、天皇という「システム」をどのようにしてゆくべきなのかという観点からの議論を尽くさないまま、急いで決めていいことではないでしょう。
ことを性急に運ぼうとしているのは、浩宮さんや秋篠宮さんのお子さんたちがまだ幼いうちに決めないと間に合わなくなる、ということでしょうけれど。実際、いかに急いで決めようとも、いまさら紀宮さんの結婚と皇族離脱を翻すことは無理でしょうし。

まあ現実には、女性天皇とともに女系継承を認めない限り、目の前に迫っている天皇家断絶は避けられない可能性が高いので、選択肢はあまり多くありません。
とはいえ、女系継承を認めたところで、断絶しない可能性をやや増やすだけ、問題をやや先送りするだけではないかとも思えるので、やはり、憲法改正論議とあわせて、天皇家および天皇制のありかたをここできちっと考えるべきです。

ぼく自身がまず素朴に抱くのは、現在の皇族の方々のご苦労やご心労はすでに想像するにあまりあるので、この上さらに、皇位継承にともなうつらい思いを抱く人を増やしてほしくない、という思いです。
浩宮さんでさえあれほど配偶者捜しに苦労し、またその相手となった雅子さんは、子どもを作らなければならないという重責に相当さいなまれたはずです。女性天皇となった人は、そのおふたりが経験した両方のプレッシャーを一身に背負わなければなりません。
天皇家の小さなお子さんたちをかわいいと思う方々は、であればこそ、彼女たちをそのような重圧のなかに放り込むことになることを、想像してみてください。


ぼくは、国家の中に天皇というシステムを組み入れない道を模索するべき時期にきていると思います。
ですが、多くの国民の精神的な支柱になっていることもまた事実のようなので、完全な共和制への移行が可能なのか、もしくはそれが良き選択なのかはまだよくわかりません。もう少し考えてみたいと思います。


朝日選書760『女性天皇論』 中野正志著 朝日新聞社刊
ISBN: 4-02-259860-3
天皇制および天皇について知るガイドブックとして、これは見事な力作です。タイトルは「女性天皇論」とありますが、これまで天皇の歴史ならびに制度について、様々な立場からなされてきた数多くの人の発言や議論、論文を緻密に総覧し、その上で女性天皇についても冷静に提言しています。

[政治・国際・社会]
2005.10.31 - 12:12 AM |
カッターナイフを持ち歩いてはいけません。 | ひとが殺されない幸福

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