高機能の使い勝手

ここ1年あまり、ずっと悩みながら控えていたHDD/DVDレコーダーの購入に、ついに踏み切りました。
そろそろ、アナログ放送向けのレコーダーとしての機能は安定期に入ってきたと思えることと、ハードディスクの容量がそれなりに大きくなってきたことによるところが大きいでしょう。
デジタル放送になるとまた様々なサービスと機能の連携が考えられますが、デジタル放送の雲行きはまだ混沌としているので、今の時点でそれを考慮に入れないほうがよいと思います。

さて、実際に使用しはじめてみると、機能への不満はあまりありませんが、操作性にはかなり問題があり、大いに不満です。
ぼくが買った製品がダメで、「買ってはいけない」、などと言いたいわけではないので、ここではメーカー/製品名は書きません。しかしできたら改めての機会に、より具体的な形で、使い勝手の批評をしたいと思っています(その際には製品名も明記することになるでしょう)。

操作上の最大の問題点は、リモコンの目的が、画面とのインタラクションではなく、コマンドを送ることである点にあります。言葉を換えると、「画面をリモコンで操作する」のではなく、「リモコンでの操作を画面に反映させる」形になっている点です。
この違いは微妙なようで、非常に大きいものです。まったく逆の方向性と言ってもいいでしょう。作り手は、この違いをわかっていて選択しているのではなく、この違いに気づかず、意識していない可能性が高い。

HDD/DVDレコーダーは、テレビの画面を使ったインタラクションができるという、ほかの家電にはない大きなメリットを持っています。電子レンジなどのように、せいぜい小さな液晶をつけるのが関の山である家電とはその点が大きく違いますが、その利点が十分に生かされていません。

リモコンは、常時持ち歩くケイタイのようには、大きさの制限をそれほど受けないので、手に持つのが負担でない程度に大きくし、そこに配置できるだけのボタンを配置していますが、この点がインターフェース設計においての「甘え」を生んでしまっているように思います。これはこのHDD/DVDレコーダーに限らず、昨今のリモコンのどれにも言えることですが。

マニュアルは厚く、かつてこれほど厚いマニュアルの家電を持ったことはありません。プロ向けアプリケーションソフト並です。でも、機能が多いのでマニュアルが厚くなるのはしかたがないことです。
しかし、この厚いマニュアルを見ないと操作できないことは、しかたがないとは言えないでしょう。機能が多いからこそ、マニュアルを見ないでも操作可能な使い勝手が強く求められます。いちいちマニュアルを見なければならないとなると、面倒になってしまい、せっかくの機能を使わなくなってしまいます。機能が大きな売りとなる商品では、競争力を大幅に削ぐ結果になってしまいかねないでしょう。


機能の高度さと、使い方の難しさは、比例するものではありません。
「機械オンチ」(この言葉が意味する範囲は人によって違いすぎ、もはや意味がないとさえ言えますが)の人が自らを卑下する必要はまったくありません。
「機械オンチ」を「オンチ」たらしめているのは「機械」であって、使う側の問題ではありません。

F1や自立歩行ロボットのような、人類最先端の技術の粋を自動車に反映したからといって、その自動車の使い勝手が悪くなるわけではありません。むしろよくなるはずです。
コンピュータがマウスとメニューとウインドウのシステムを導入していなかったならば、これほど多くの人が多くて複雑な機能を使えるようにはならなかったでしょう。

よい使い勝手こそが、高機能化を促すのです。

高度な機能を使える技術を生み出していながら、それを「使えない」状態にしてしまっているのは、作る側の責任ですが、それによってみずからの首を絞めてしまうことでもあります。
もったいないことこの上ない。
使う側、作る側、両方にとって不幸なことなので、そこをなんとかしたいと思うばかりです。

[編集・情報・ことば]
2004.12.29 - 10:06 AM |
役と役者と、かつて生きた人と | 泣き笑いの一年

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