『闇に咲く花』の忘れがたさ

「忘れることは罪だ。忘れたフリをするのはもっとわるい」

井上ひさし脚本、こまつ座の公演を見てきました——。

あの戦争のとき。何があったのか。そこにいたひと、そこにいた自分は何を考え、何をしたのか。
それらを正面から見据えることからしか、間違いを犯さないようにする方法はない……。
忘れたフリをしつづけている権力者への批判を底流におきつつ、流されて行動した一般の人々のなかの忘却や、忘却のフリに対してもまた強い批判を浴びせ、忘れないためのつらい勇気を称え、つらい結果を引き受けようとします。

しかしまた同時に、様々な苦しみを抱えている市井の人々を励まし、暖かく見守る視線にもまた満ちています。苦しみをやわらげるしくみや、互いの思いの交流を愛おしく描いています。

20年前の脚本だということをあとで知りましたが、今この時代にあってこそ、井上ひさし自身の、少なくなってゆく同時代の仲間への悲痛なメッセージにも、思えました。

井上ひさしとこまつ座の芝居を生で観るのは初めてでしたが、期待通りの魅力的で豊かな芝居でした。
そしてひとつひとつの言葉をたいせつにした科白の数々。

ただ、客の年齢層がけっこう上だったのが気になりました。
特に今回の演題などは、今、高校野球の球児だったり、スポーツにとりくんでいる若い人達にぜひみてもらいたい内容だったので……。
いっしょに頑張っているチームの友人たちが、餓えたり、撃たれたり、溺れたりして、みんな死んでしまう。みんないなくなってしまう。
そんなことを、今の高校生は、大学生は、若者は、想像できるだろうか。

想像しがたいことです。でも想像しなくてはいけないことです。
そして今のうちに、忘れていないひとたちに、忘れがたい話をもっと伝えてもらわなければ。

体験をもたないぼくたちにとっては、知らないことは罪だし、知らないフリをすることは、もっと悪い。





こまつ座ホームページ[komatsuza.co.jp]

今回もまたまた、しのぶさんのメルマガ[mag2.com] から。
チケットを買おうと思って失念していたところに、号外を出してくれたことに感謝です。
しのぶさんの推薦には、はずれがない。みんな見たくなってコマリマス。

[映画・演劇・テレビ]
2008.08.26 - 10:51 PM |
もんじゅの知恵はいかばかりか | ブログお引っ越し

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