青山ブックセンター追悼

一青 窈の歌う「大家(ダージャー)」のフレーズが頭の中ではげしくリフレインしている。

なんということ。
こんなに突然に、大切なものを失うとは。
失ってから、これほど大切だったことに気づくとは。

ひとりの信頼すべき親しい人間の死に対面したかのような
失うことでこれほどの悲しみを与える場所がほかにあるだろうか。

強いストレスを抱えたとき、つらい思いにいたたまれなくなったとき、
終電も気にせずに、何時間かをすごし、
自らをふりかえる余裕と、元気や勇気を、新しい何かを作る活力を、
いつも与えてくれた場所が
これほど突然に、消滅してしまうとは。

ABCよ。

あなたを支えられなかったことを、ぼくは本当につらく思う。
もうしわけなく思う。

「編集」の行き届いた棚そのものが、
ものづくりとはこのようなことだ、ということを
情報を伝えるとはこのようなことだ、ということを
その技術とこころざしを、
訪れるたびにいつも教えてくれた。

ついおとといも、あなたの懐で2時間、いだかれて、
あたたかさと強さ、前を向いた思いを、ぼくの中にめばえさせてもらったのに。


誇り高きABCをも維持できないほど、
この国の出版は死に瀕しているのか。
この国は、この都市は、文化にこれほど価値を見いだしていないのか。

そう思うと、絶望が深まるばかりではないか。


しかし、何度でも繰り返し、あなたに感謝の言葉を捧げよう。
あなたの喪失に心をひどく痛める、おおぜいの、ものづくり人は、伝い手は、
あなたが育て、守ってきてくれた思いを忘れぬように抱いて、
あの空間の空気、光、においを、ときに記憶によびさまして、
意味のあるなにものかを、作り、伝えつづけようとするだろう。


涙が、とまらない。
ごめんなさい。
そして、ほんとうに、ありがとう。

[編集・情報・ことば]
2004.07.17 - 03:00 AM |
『A2』にこの社会全体の恐ろしさを見る | MS Office 2004 for Mac

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コメント

いずみ:

今日リニューアルオープンとなったようですね。
「果てしないマラソンに出るような不安と、この先また
新しい景色を目に出来るのだという喜びでいっぱいです。」
なかなか素敵。

自由が丘店はどうなるのかな…

ayumu:

復活、まったくたまらなくウレシイですね。
とりあえず本店と六本木店のみみたいですけれど、
もう二度とつぶれたりしないよう、買いにいかなきゃ。
六本木のあの店がともかく復活したことは本当にうれしい。

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